フォトンファクトリー (PF)

施設の概要

フォトンファクトリー (Photon Factory, PF) は、大学共同利用機関法人・高エネルギー加速器研究機構(KEK)つくばキャンパスにある物質構造科学研究所の放射光施設です。1982年に放射光発生に成功してから数度の大きな改造を経て輝度や安定性を向上させている2.5-GeV PFリング、および常時シングルバンチ運転というユニークな高エネルギー・大強度パルス光源のPF-AR (6.5 GeV) という、特徴ある2つの放射光専用加速器を有し、合わせて5 eV 〜 100 keVという幅広いエネルギー領域の光が利用できます。物質構造科学研究所が持つ4つの量子ビーム(放射光、中性子、ミュオン、低速陽電子)の一つであり、他の量子ビームとの相補的利用(マルチプローブ利用)を推進しています。

利用の形態

フォトンファクトリー(PF)は、全国の大学の共同利用機関として、年間に約3000名の研究者(大学院生を含む)に利用されています。大学共同利用の課題審査は年2回(春、秋)あり、課題が採択されれば無償で施設をご利用可能です。但し、成果公開の義務があります。また産業界のユーザーのためのプログラムとして、成果専有非公開制度(「施設利用」、有償)や共同研究などがご利用可能です。PFが培ってきた放射光による材料評価・解析技術を、企業の研究開発に活用していただくことを目的として支援体制を充実させ、産業界の技術課題の解決に貢献いたします。
KEKフォトンファクトリー公開サイト

 ビームラインの紹介

フォトンファクトリーは、PFリング、PF-AR合わせて47本のビームラインがあります。以下に、主なビームラインを紹介します。他のビームラインを含めて設備情報の詳細をお知りになりたい方は、施設のウェブサイトをご覧ください(サイドメニューの設備詳細でリンク)。
 

【BL-19A/B】軟X線顕微・分光実験ステーション
走査型透過X線顕微鏡(Scanning Transmission X-ray Microscope, STXM)を常設しています。数10nmに集光した軟X線で試料を走査し、X線吸収スペクトルの空間分布を測定することで、元素の種類・量だけでなく化学種を識別したマッピングが可能です。軟X線領域の光を用いることで、炭素や窒素、酸素などの軽元素の化学状態分析に威力を発揮します。産業界でのイノベーション創出や、環境・地球・惑星科学など、様々な分野での展開が期待されています。

【BL-14C】X線イメージングステーション
BL-14は、世界で唯一の垂直ウィグラーからの縦長放射光を光源とするビームラインです。BL-14Cに常設の広視野高分解能X線干渉計(右写真)は、重力の影響を受けない光学素子の水平配置が可能となるので、世界最高の空間・密度分解能のX線位相コントラストイメージングが実現しています。軟部組織中の微小な密度差を識別できることから特に医学分野への応用が推進されていますが、その他にも天然ガスハイドレート、ポリマーブレンドなど、産業分野への応用も行われています。

【BL-2A/B】MUSASHI: 表面・界面光電子分光、広エネルギー帯域軟X線分光ステーション
BL-2 MUSASHI(Multiple Undulator beamline for Spectroscopic Analysis of Surface and HeteroInterface)では、真空紫外光用と軟X線用の2台のアンジュレーターを光源とし、30eV〜4keVの広いエネルギー範囲の高輝度が利用できます。BL-2Aにはin situ高分解能角度分解光電子分光とレーザー分子線エピタキシーの複合装置が常設されていて、原子1層レベルで制御された酸化物薄膜表面やヘテロ界面に対して、角度分解光電子分光、内殻光電子分光、共鳴光電子分光などの様々な表面・界面光電子分光測定を同一試料で行うことができます。BL-2Bには回折格子分光器の他に2結晶分光器が設置されていて、さらに広いエネルギー範囲(〜4keV)が利用できます。

【BL-1A】タンパク質結晶構造解析ステーション
フォトンファクトリーには、タンパク質結晶構造解析ビームラインが5つあり、生命科学や創薬に関する研究開発が行われています。全てのビームラインに自動化ロボットが導入されており、ハイスループット計測や遠隔測定が可能であり、コロナ禍で研究者の移動が難しくなった時期も研究を続けることができました。そのうちの一つであるBL-1Aは、世界的にも珍しい低エネルギーX線利用に特化したビームラインで、ヘリウム雰囲気下の回折計など、低エネルギーX線を効率よく利用できる工夫がされています。タンパク質結晶に含まれているイオウやリンの異常散乱を利用した「Native SAD」法による構造決定を行うことができます。

【BL-3A】極限条件下精密単結晶X線回折ステーション
真空封止型短周期アンジュレーターを光源としたビームラインで、常設の超伝導磁石を搭載した二軸回折計(右写真:手前の装置)により高磁場下でのX線回折実験が可能です。また、偏光を利用した「共鳴X線散乱法」により、電荷・軌道・スピンの秩序状態を調べる構造物性研究が行われています。最近では、新たな物質探索により開発された「磁気スキルミオン」を安定にもつ物質を共鳴X線散乱法で観測し、スキルミオン安定化のメカニズムに関する知見を得たことで注目されています。

【BL-12C】ハイスループットXAFS実験ステーション
フォトンファクトリーでは、XAFS(X-ray Absorption Fine Structure / X線吸収微細構造)を測定できるビームラインが多数あり、そのうちの一つであるBL-12Cはハイスループット測定に特化したビームラインで、100連装自動試料交換装置や、リモート測定に対応した検出系が用意されています。その他のXAFSビームラインについては、PF-XAFS website https://pfxafs.kek.jp を参照してください。

分子研 UVSOR

次の記事

分子科学研究所 UVSOR