1期目の光ビームプラットフォームを含め、これまでの活動をご紹介します。

transfer vesselの普及(1期)
transfer vesselは嫌気性試料の運搬用として立命館大学SRセンターが開発したサンプルステージ内蔵の真空引き可能な運搬装置です。技術が展開され、あいちSR、兵庫県立大ニュースバル、九州SRに導入されました。

XAFSデータフォーマットの検討(1期〜2期)
記録メディアの大容量化と高速化により、従来の実験データのデータフォーマットに装置条件などの詳細情報も付加して記録したいという要望の高まりを受け、XAFS用の9808データフォーマットの更新案としてxmlを用いたフォーマットを検討しました。テンダー領域のXAFSデータの記述、実験データの2次元化、3次元化を見据えてデータフォーマットについては現在も引き続き検討を行っています。
参考文献: 仁谷ら、“「光ビームプラットフォーム」おけるXAFS分野の活動”、第19回XAFS討論会、P-34、2016年9月2-3日.

サンプルホルダーの互換性(1期)
同一試料を異なる施設で実験する際に、サンプルホルダが異なると試料を付け直しをせざるを得ない場合があります。そこで、9x7mm程度の抜き差し可能な共通ステージを定義して、試作を行いました。2期目のラウンドロビンでは一部活用しています。

トップランナー技術の水平展開(1期)
transfer vesselの他にも各機関が持つ優れた技術を水平展開して技術レベルを高める取組も行っています。嫌気性試料のXRD実験を行う場合に有用なHe雰囲気形成用のカプトンドーム(SPring-8の技術)をKEK、あいちSR、九州SRに展開しました。

また、小角散乱実験に用いる真空槽の窓材に従来のカプトンフィルムに替えてスぺリオフィルムを用いる方と良いというノウハウの展開も行いました。少量で足りることから、プラットフォームで一括購入して普及を図りました。

ラウンドロビン実験(2期)
先端研究施設を積極的に活用するユーザーは、施設の運転時期に応じて施設の使い分けを行ったリ、異なる光源特性を活かして複数の施設を活用して解析する場合があります。また、低濃度の試料など、装置限界に近い条件での実験を希望するユーザーもいらっしゃいます。そのようなケースにも的確にアドバイスが出来るように、光ビームプラットフォームでは各施設で同一試料の実験を行い、施設の特長と実験データの互換性をお互いに把握する事を通して施設の技術力の向上を図り、最終的にはユーザーサービスの向上につなげる活動を行いました。2期目の2016年度から取組を開始し、硬X線XAFS、硬X線光電子分光、軟X線XAFSなどでラウンドロビン実験を行って、報告会等で積極的に情報発信を行い、ユーザーの方々のご支持を頂きました。

複数施設の連携活用の推進(2期)
材料分析や物性測定では、単独の手法だけで解決を図ることが困難なケースが多々あります。そこで、施設の連携を活かした活動として、ユーザーが期待するソリューションを得るための方法論を積極的にアドバイスする、一種のコンセルジュサービスを行いました。ユーザーの期待をお伺いし、分析の専門家として、異なる施設や手法の組み合わせを提案したり必要に応じて実験計画等を支援することで、より早く・より高度な解を図ろうとするものです。また、この活動を通して、ユーザーの方々が施設スタッフと気兼ねなくコミュニケーションできる基盤作りを指向しました。

データ基盤整備の推進(2期)
異なる施設間で得られた実験データの比較やデータ活用を図る上で、データの記録フォーマットの共通化は大きな鍵です。しかし、既存の運用システムをそのための改修することはリソースの負担が大きく、躊躇してしまうのが実情です。そのため、一つはラウンドロビンで得られた実験データをそれぞれの機関がデータベースの公開として情報発信し、データの利活用の機運を高める活動を薦めました。一方で、XAFS Database Workshopをはじめとするコミュニティによるデータベース利用と、アーカイブ時におけるメタデータの共通化の議論に積極的に参画し、データ基盤の整備を指向しました。放射光施設が所有する硬X線XAFSの実験データに関しては、物質・材料研究機構のマテリアルデータリポジトリ(MDR)へ収容する計画が進められつつあります。