広島大学 HiSOR

施設の概要

広島大学に設置された放射光施設である放射光科学研究センター(以下HiSOR)は、周長 22m弱のレーストラック型・小型放射光源(0.7 GeV)と11本のビームラインで構成されています。1996年に真空紫外・軟X線域での放射光利用研究の推進と人材育成を目的として設置されました。2002年度に「全国共同利用施設」として新設され、2010年からは共同利用・共同研究拠点として認定されています。
HiSORでは世界最先端の計測技術を用いて超伝導や電子スピンに由来する量子現象を研究する固体物理学および溶液中の生体分子の立体構造を研究する物性・生命異分野融合領域の研究、ならびに高輝度小型放射光源や挿入型光源に関する研究を行っています。

また大学の中に置かれた研究拠点として、多様な文化や背景を持つ国内外の大学・研究機関の第一線の研究者と共通の研究課題に取り組み、互いに学ぶことのできる環境を活用した、学部・大学院生および若手研究者の育成を進めています。

利用の形態

HiSORでは年2回の一般課題公募(A期:4月〜10月;公募〆切6月30日,B期:11月〜3月;公募〆切12月31日)および緊急課題公募(特に緊急性の高い課題 随時受付)を行なっています。詳しくは施設のウェブページをご覧ください。また、ご利用については、事前に利用希望ビームラインの担当者や責任者までご連絡ください。(担当一覧はこちら

・大学・国公立研究機関の方
HiSORは共同研究・共同利用拠点です。大学や国公立の研究機関の方は原則無償でご利用いただけます。旅費の支給を受けることもできます。
・民間企業などの方
HiSORスタッフとの共同研究の場合、大学などの研究期間同様の条件でご利用いただけますが、成果非公開の開発研究の場合には有償となります。
 

ビームラインの紹介

以下に、HiSORの主な実験ステーションを紹介します。他のビームラインを含めて設備情報の詳細をお知りになりたい方は、施設のウェブサイトをご覧ください(サイドメニューの設備詳細でリンク)。
  

BL1]偏光依存高分解能角度分解光電子分光(リニアアンジュレータ)
主に固体の電子状態を研究するためのビームライン。リニアアンジュレータからの直線偏光に対して装置全体を0度〜90度まで連続的に回転させることができる機構により、詳細な偏光依存角度分解光電子分光測定を行うことが可能です。

[BL9A] 低エネルギー高分解能角度分解光電子分光 (アップルIIアンジュレータ)
放射光のビームラインとしては世界最高のエネルギー分解能(サブmeV ~数meV)での角度分解光電子分光測定が可能です。直入射分光器により4~40 eVの低エネルギー放射光を利用できます。

[BL9B]高分解能スピン角度分解光電子分光 (アップルIIアンジュレータ)
従来の100倍の検出効率を持つ低速電子回折型スピン検出器を備えたスピン・角度分解光電子分光測定が可能です。2台のスピン検出器を用いることでスピンベクトルの三次元解析もできます。

[BL12]生体物質円二色性
 ベンディングマグネットからの紫外・真空紫外光を用いて、蛋白質や糖鎖などの生体物質の円二色性を水溶液中で測定可能です。環境に依存して鋭敏に変化する生体物質の構造変化を精密に計測できます。直線二色性の測定から生体物質の配向構造の研究もできます。

[BL14]軟X線磁気円二色性
ベンディングマグネットからの楕円偏光を用いた磁性体の磁気円二色性を行うことが可能です。標準的な表面作成装置を装備しており、表面磁性やナノ構造体の磁性研究が可能です。表面評価装置としてSTMも備えられているため詳細な表面キャラ クタリゼーションを行なった上で測定ができます。

その他、表面XAFS(BL3)、岡山大学ビームライン(BL5)、気相光化学(BL6)、汎用角度分解光電子分光(BL7)、XRD・XAFS(BL11)、表面光化学(BL13)などが整備されています。また、オフライン装置として真空紫外領域逆光電子分光(PES)、レーザー励起超高分解能角度分解光電子分光(Laser-ARPES)があります。

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