JASRI/SPring-8
施設の概要
大型放射光施設「SPring-8」は、国内外に広く開かれた我が国が世界に誇る最先端研究基盤として、兵庫県の播磨科学公園都市に建設されました。平成9年10 月の供用開始から現在に至るまで、未踏の科学技術領域の開拓に寄与し、ナノテクノロジー・材料、ライフサイエンス、環境、情報通信等の広範な研究分野に飛躍的な発展をもたらし、学術研究から産業利用まで幅広い研究開発を支えています。
SPring-8 の加速器は、主に線形加速器、シンクロトロン及び蓄積リングの3つで構成され、蓄積リングの電子エネルギーは80 億電子ボルト(8 GeV)の世界最高性能を有する施設です。また、放射光を測定試料まで導くビームラインは、最大設置可能数62 本のうち、約9割に当たる56本が稼働中、1本が調整中です。ビームラインは、大学、産業界及び海外の研究者等に広く利用される共用ビームライン(26 本)、特定の研究機関や企業等が設置し、独自の利用研究課題を実施する専用ビームライン(18 本)、その他に、設置者である理化学研究所が自らの研究開発を行うためのビームライン(11本)及び加速器診断ビームライン(2本)から構成されています。
主な利用形態
SPring-8は学術利用を目的とした成果公開・無償利用を主としますが、産業利用ビームラインBL19B2、BL14B2、BL46XUを中心に多数の企業の方に成果専有・有償利用もご利用いただいています。また、JASRIのスタッフが利用者に代わって測定を行う測定代行も随時募集しています。ご利用についての御相談は“support@spring8.or.jp”にご連絡ください。皆様の御利用をお待ちしております。
ビームラインの紹介
以下に、一部の設備をご紹介します。他のビームラインを含めて設備情報の詳細をお知りになりたい方は、施設のウェブサイトをご覧ください(サイドメニューの設備詳細でリンク)。
BL19B2 粉末X線回折
短時間で高分解能な粉末X線回折データが得られます。30試料の自動連続測定や温度変化の自動測定に対応しています。右下図は5分間の露光(31 keV)で得られたCeO2の測定結果です。通常のX線源(CuKα)では測定できない高波数域でもシャープな回折ピークが得られます。
BL19B2 (極)小角散乱
カメラ長42 mの極小角散乱装置と2 mの小角散乱装置を組み合わせて0.003~3 nm-1の波数域の測定が可能です。金属材料中の析出物の粒径分布、ナノコンポジット材料中のフィラーの分散状態、界面活性剤の自己組織化構造の評価が行われています。
BL19B2 X線イメージング
屈折コントラストにより、X線吸収が小さい試料も観察可能です。高エネルギーX線を用いて金属などX線吸収が大きな試料の内部構造も観察できます。右下図は粒塊型応力腐食割れが発生したステンレス鋼のCTイメージです。
平成 19年度 SPring-8 重点産業利用課題成果報告書(2007B)
BL14B2 XAFS
CaからWまでのK端、SbからLuまでのL端におけるXAFS測定が可能です。透過及び蛍光(45°配置)法では、試料交換とXAFS測定を自動で連続して行えます。多様な試料環境(低温、高温、ガス雰囲気)の実験に対応するための試料容器(右下図)やガス設備も備えています。
BL46XU 硬X線光電子分光
硬X線励起により、通常のESCAでは測定できない試料深部の化学状態の非破壊観察が可能です。図中のデータは、8keV励起で測定したAu,Ni薄膜に埋もれたSi基板からの光電子スペクトルです。この特徴を利用して、界面でのband bendingの評価等が行われています。
BL46XU&19B2 多軸回折装置
豊富な軸自由度(試料方位4軸、位置3軸、検出器方位2軸)と優れた耐荷重性(8kg)を有する多軸回折装置がBL19B2とBL46XUに設置され、有機薄膜の蒸着過程その場観察(右下図)、金属材料深部の残留応力測定、液中試料の反射率測定など、多様な実験に対応できます。